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第1回


■「ビジネス心理」の定義をめぐって

「ビジネス心理」は欧米でも盛んになってきています。それは様々なメソッドや「○○法」のようなものを越えて、ビジネスに「心の科学」を応用していく総合的な学問のことです。そのために、「日本ビジネス心理学会」(http://bpa-j.org)では、次のように定義しています。

ビジネス心理とは、いかに人の能力と組織の活力を向上させるかというマネジメントの課題と、顧客を創造し満足度を向上させていくかというマーケティングの課題に応える総合的な“心の科学”である。」
 つまり、社員の心理であるマネジメントと顧客の心理のマーケティングに領域を分けている点と、組織や顧客という視点をベースにしている点、それと総合的な科学だということ、この3つの特徴があります。

 英国ビジネス心理学会(http://www.theabp.org.uk)では、次のような内容をビジネス心理のテーマ対象としています。
『人材採用評価/組織開発/コーチング/リーダーシップ/学習教育 /タレントマネジメント(能力管理)/エンゲージメント(社員満足)/快適な仕事環境/パフォーマンスマネジメント(目標管理)/ 企業文化/ウェルビーング(ストレス管理)/心理適正診断』
 日本ビジネス心理学会のものは、英国のものよりもマーケティング心理系を追加する形になっており、よりトータルなビジネス心理学をめざすものだといえます。

 産業カウンセリングやキャリアカウンセリングなど、仕事に関わる心理系の資格では、こうした視点が理論としても意識されていません。心理的な用語として「自己実現」「チームビルディング」といった内容を学んでも、そこにビジネスを変革していく戦略性や仕組み改善の方法が欠けているからです。

 カウンセリング系の理論では、主に人の“ケア”が中心の理論であり、 そこには悪い部分を“治療する”という臨床的なメソッドが応用されてきた歴史があります。それは個人を病というマイナスからどうやってゼロの普通の状態にもどすかというケア中心の心理学だったわけです。
 日本ビジネス心理学会の検定資料では、次のような図解でカウンセリング系との違いを示しています。

◆《図:ビジネス心理の位置づけ》

■「心の科学」の発展としての「ポジティブ心理学」

 心理系の学問体系では、「人間心理学」といった哲学的なものと、科学としての「実験心理学」があり、それとは別に病を治す「臨床心理学」があるといった関係でした。
 実験心理学では動物の行動を対象としながら客観的な分析をしていくものであり、大学の研究者らはこの分野で活躍してきました。確かに仮説検証をしていく科学には向いているのですが、そこでは人間の高度な思考や感情の「直観」、「愛」、「勇気」、「希望」といったものは排除されてきたわけです。

 当然、従来では臨床的な方法で人の心を扱うことが主流とならざるを得なかったわけですが、2000年代から大きく心理学の流れが変わってきました。
 その象徴的なものが「ポジティブ心理学」というもので、2002年に米国にマーチン・セリグマンの呼びかけで学会ができます。その後、ハーバード大(タル・ベンシャハー)やスタンフォード大(ケリー・マクゴニガル)などを中心に、欧米ビジネススクールでとくに人気講座となり注目されるようになってきました。

 しかし、ポジティブ心理学の成果というのは、それを専門とする特殊な学問領域の研究者達が発見したようなことではありません。米学会のセリグマン自身もそうですが、人がどう発達し成長し幸せになっていくか、仕事の中での成功は何によって可能となるか、こうしたこと一部の学者の成果などでは決してありません。
 それは教育系の心理学やリーダーシップや目標管理の行動科学などの専門家、そして脳科学や認知科学など、これまで「心の科学」として研究し、相互に影響されて産み出されてきた成果によるものです。

 そうした歴史的な学問の流れを知らないと、多様な研究者らが幸福感や楽観性などポジティブな内容をテーマとして成果をあげてきてきたことがわからないのです。
 その意味でポジティブ心理学が、何かそこに新たな学問を構築したということではないことを強調しておきたいと思います。

以上。

ご意見ご感想

★編集部より

■ 「ビジネス心理検定」 / グローバルでも通用する本格派の心理系資格

 日本初の本格的な経営や営業での心理系資格《ビジネス心理マスター》 を認定する検定試験が4月26日に2回目が実施されます。これは中央経済社の全面的協力のもと公式テキスト全3巻が同社より発売中です。
主催団体の日本ビジネス心理学会では、「心理学のMBAをめざす」を標語に、オンライン講座も初級・中級用がほぼ完成。2016年より韓国、中国、台湾の政府機関や大学からのオファーで、アジア圏で統一検定を行うために準備中です。

★お問い合わせはこちら

 

********* 【筆者プロフィール】 ****************************************

 
最強の仕事術

匠 英一( Eiichi Takumi )
デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部:教授

和歌山市生まれ。東京大学大学院教育学研究科を経て東京大学医学部研究生修了。
90年より(株)認知科学研究所を創立。95年より中堅IT企業に入社し、インターネット活用の企画営業や顧客管理(CRM)のコンサルに従事。これまで15の異業種団体や資格団体を創設。公的な役職として、中央職業能力開発協会OA検定中央委員、CRM協議会理事・事務局長、早稲田大学客員研究員、見える化経営協会LLP:会長、eマーケティング協会専務など歴任。
 現在は上記大学の教授職を兼務しながら、日本ビジネス心理学会:副会長と(株)ラーニングスクエア:CLOなどで顧客サービス・商品企画法、人材開発、組織改善のコンサル業務に従事。
 著書には、「認知科学:仕事力」、「ビジネス心理(全3巻)」、「顧客見える化」、「心理マーケティング」など計40冊あり。
 

E-mail : takuei@netlaputa.ne.jp

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