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●第十二回 「育ち上手は質問上手」

 しばらく間が開いてしまい、いつの間にか世間は新入社員を迎える季節となりました。
 今回は、仕事に就いたばかりの社会人一年生の仕事振りを想定して「育ち上手」の特徴を考えてみたいと思います。

【場面その10】
ある仕事をしていて分からないことがあり、先へ進まなくなりました。
社会人一年生のあなたなら、何番の行動を取りますか?

1.誰かが声をかけて助けてくれるまでじっと待つ。

2.自分の仕事だから、他人を頼らず自分で解決できるまでがんばる。

3.分からないことは、なんでも上司や先輩に教えてもらいに行く。

4.とことん自分で考えて、どうしても自分では解決できないことだけを教えてもらいに行く。

5.自分が分かっていることと分かっていないことを整理し、また、自分で考え答えを出すべきことと誰かの指示を仰ぐべきことを切り分け、何を聞くべきか、どう聞くべきかを考えてから上司や先輩に質問に行く。

→ 1. 「誰かが声をかけて助けてくれるまでじっと待つ」というのでは、何も解決できません。仕事が先に進みません。
 偶然に声をかけてくれる人がいるかもしれませんし、上司や先輩としてはそういう気配りも必要ではありますが、それを期待して待っているようでは成長は望めません。まして、与えられた仕事を全うすることができるとは思えません。社会人として失格です。

→ 2. 「自分の仕事だから、他人を頼らず自分で解決できるまでがんばる」というのは、一見すると責任感が強いように見えますが、実はとても無責任なのだと気づきましょう。
 仕事の責任とは結果を出すことです。他人の助けを借りたかどうかというのは別問題です。いつまでも他人を頼ってばかりで自分の力で解決しようとしない、というのは問題ですが、時に応じてお互いに助けあい、より早くより良い結果を出すことが一番重要なのです。
 自分自身で解決すべきことも、もちろんあります。ですが、その範囲を超えて何でも自分だけで解決しようと考えるのは、不遜でもあり、生意気でもあり、その挙句に仕事の完成が大幅に遅れたり成果が不十分に終わったりすれば、かえって大迷惑を掛ける結果になるのです。

→ 3. 「分からないことは、なんでも上司や先輩に教えてもらいに行く」というのでは、周囲を頼りすぎです。ですが、社会人になりたての時期は、それで良いのです。
 もちろん、いつまでもそのままでは困ります。一度教えてもらったことはしっかりと覚えて、二度と教えてもらう必要がないようにするのはもちろんのこと、その知識を応用して自分で判断できるようになることが大事です。
 そのためには、教えてもらったことの意味をしっかりと理解することが必要です。「こうすれば良い。こうすればできる」と教えられて、それをただその通りに実行しているだけでは、何も進歩がありません。「なぜそうするのか、そうすると良いのか」を理解しましょう。それが理解できなければ、理解できるまでその意味を教えてもらいましょう。とことんその意味を考えて理解しましょう。
 そして、しっかりとメモを取ることです。とはいえ、一言一句正確に書く、ということではありません。それでは時間ばかり掛かってしまいますし、大切なことを見失うことになりがちです。ポイントを整理して簡潔にメモすることが重要です。
「意味を理解し、ポイントを簡潔にメモする」。そうすると、記憶としても鮮明に残り、応用できる知識として定着するものです。そして、同じような質問を繰り返すことがなくなります。結果的にそのほうが上司や先輩に迷惑を掛けなくて済むのです。

→ 4. 「とことん自分で考えて、どうしても自分では解決できないことだけを教えてもらいに行く」というのは、仕事に慣れて来た段階では必要なことです。ですが、自分で解決すべきことと指示を仰ぐべきことが切り分けられていない段階では、袋小路に入り込む危険性が高いものです。
「分からないこと」には二種類あることを知りましょう。

・指示内容の不明確な点(要求事項や仕様などの情報)
・作業をするために必要な知識や技術

 前者は、いくら自分で考えても解決できるはずがありません。さっさと確認に行かないと仕事は先に進みません。これが「指示を仰ぐべきこと」です。
 後者は、仕事をするために必要で身に着けるべきものですから、いつまでも他人を頼ってはいけません。これが「自分自身で解決すべきこと」です。ですが、後者は最初から身についているものではありませんので、最初のうちは知識や技術を教えてもらい、次に調べ方を覚えて自分で調べるようになり、詳しい人にアドバイスをもらったりしながら身につけていくものです。ですから、成長過程の段階によっては「教えてもらうべきこと」でもあるのです。

→ 5. 「自分が分かっていることと分かっていないことを整理し、また、自分で考え答えを出すべきことと誰かの指示を仰ぐべきことを切り分け、何を聞くべきか、どう聞くべきかを考えてから上司や先輩に質問に行く」というのは、慣れるまでとても難しいことだと思います。ですが、常日頃からこういう訓練を積んでいないと、自分自身で問題を解決できるような人材に育つのはなかなか難しくなります。
 質問すべきかどうかの判断だけでなく、質問の仕方も考えるようになると、本当の質問上手になれます。

「育ち上手」は質問の仕方が上手です。時と場合によって質問の仕方を変え、的確な質問をします。また、質問するべきことか、自分で調べるべきことか、それとも自分で考え答えを出すべきことなのか、そのつど的確に判断します。それは、成長するにしたがって少しずつ身についていくものです。
 その出発点は、「何でも質問すること」です。それは、社会人になりたての時期だけに許される特権なのです。何でも質問しながら質問のコツを覚え、質問すべきことか否かの判断を身につけていきましょう。

 次回からは、また別の場面を取り上げて、別の観点から「育て上手」「育ち上手」の特徴を考えてみたいと思います。

 ご期待ください。

********* 【筆者プロフィール】 ****************************************

島川 孝博
 サンネット株式会社(http://www.sunnet.co.jp/html/) コンサルティング事業部 部長。

 横浜市立大学卒業後、株式会社小田原電子計算センター(現サンネット株式会社)入社。システム開発業務に従事しながら、自社の新入社員教育体系を構築し、社内教育テキストを執筆。プロジェクトマネージャーとして数々のプロジェクトを担当する課程で、知識や技術だけでなくヒューマンスキルが重要であることを痛感し、社内教育体系を整備。社員の成長意欲を刺激し能力開発を業績へと結びつける公平で納得性の高い人事評価制度を構築。人事評価制度の仕組と人材育成の理念を書籍として出版(下記【著書】参照)。書籍の出版を契機に「ITスキル標準」に関する研究活動に参加(下記【所属団体・社外活動】参照)。現在は、プロジェクトマネージャーとしての役割を後進に任せ、コンサルティング業務に専念。社内の人材育成だけでなく、UISS活用ワーキンググループのメンバとしても活動。

【保有資格】
ITストラテジスト、プロジェクトマネージャー、特種、一種、二種
特定非営利活動法人ITCA認定:ITコーディネータ 
米国PMI認定:PMP(プロジェクト・マネジメント・プロフェッショナル)

【実績】
・ITスキル標準を活用した「人材育成/人事評価制度構築」コンサルティング(実績:IT企業全国11社)
・UISSを活用した「人材育成制度構築」コンサルティング(実績:大手生保1社)
・人材育成・人事制度に関するセミナー講師(延べ33回1,170名 内自社開催9回453名)
▼ 自社開催セミナー『育つ社員のつくり方』の取材記事
http://www.nextet.net/e-learning/69/feature/sp04-1.html
・神奈川県内大学・高校の社会人講師 数校

・2009年度専門化コミュニティ活動表彰(経済産業省 商務情報政策局長表彰) 受賞
http://jinzaiipedia.ipa.go.jp/view/18/545/
・2010年度(第21回)iSUC一般ユーザー部門優秀講師賞(GOLD) 受賞
http://www.uken.or.jp/isuc/isuc21/about/history.shtml#02
→IBMユーザー研究会機関紙「IBM USERS」2011/1(585)号に講演抄録掲載
http://www.uken.or.jp/users/pdf/users585-w.pdf

【著書】
・「情報処理企業のためのキャリアパスによる人材育成・人事評価 運用と実践」(2002年12月初版)
・「ソフトウェア企業は人材育成なくして生き残れない ―人を育てる4つの柱―」(2006年9月初版)

上記のセミナー、書籍、コンサルティングに関するご意見・ご質問およびお問合せは、下記宛てにメールにてご連絡ください。
consult@sunnet.co.jp

【所属団体・社外活動】
・ITスキル標準センター「ITスキル標準ワークショップ」(2003年度)
・ITスキル標準センター「ITスキル標準を活用した人材育成のあり方に関する検討委員会」
・JUAS(社団法人日本情報システムユーザー協会) 人材育成研究部会
・UISS(情報システムユーザースキル標準)
2006年度:策定WGメンバ、 2007年度:改善WGメンバ、2008年度:改定WGメン 、
2009年度:活用WGメンバ
・JSDG:日本システムアドミニストレータ連絡会 正会員
(2008年度:全国大会幹事長、2009/2010年度:副会長、2011年度:会長) 
・JISTA:日本ITストラテジスト協会 (旧JSAG:日本システムアナリスト協会)正会員

【リンク】
・UISS(情報システムユーザースキル標準)
http://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/uiss/uiss_download_Ver2_2.html

・JSDG(日本システムアドミニストレータ連絡会)
https://www.jsdg.org/

・JISTA(日本ITストラテジスト協会) 旧JSAG(日本システムアナリスト協会)
http://www.jista.org

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