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第7回 グローバル人材戦略の課題 〜日本企業のグローバル人事の今、そしてこれから〜

 前回からの続きになりますが、日本企業のグローバル人事がまさに始まろうとしています。
そして、グローバル人事の進め方は、各企業のビジネスのあり方によって、それぞれ適したいくつかのタイプに分類することができます。
今回は、事例をあげながら、それぞれについてお話していきたいと思います。
人材のグローバル化の目的を一言でいいますと、当然のことながら、”グローバルに活躍できる人材を増やして、海外市場のビジネスを拡大する”ということに尽きます。しかし、そのアプローチとしては、本社国籍の人材を現地に派遣して育成するのか、現地の人材を採用して育成するのか、さらにはそのミックスと、いう様々な方法を各企業が事業の特性やステージに従って選ぶことになります。これが冒頭のタイプ分けで、「中央集権」、「現地化」、「グローバライズ」の3つの方法になります。

 例えば、日本も含めたアジア企業に多いのが、中央集権型であり、本社国籍の従業員を各国に駐在、出向させて、各国でのビジネスを任せるという手法です。この手法は、海外には存在していない自国のビジネスモデルを海外に展開していくような企業、または、自社製品や技術が海外市場で圧倒的優位性がある企業の場合、有効です。また、各国に派遣できるだけの人材を自国で確保でき、育成できるかどうかも判断の基準となります。
例えば、韓国のサムスングループは、地域専門家制度という大変有名なグローバル人材育成プログラムを持っています。優秀な本社従業員を選抜し、駐在を予定している国に前もって1年間派遣します。
そして、実業務に携わることなく、1年間を自由に過ごしながら、その国の文化や言語を学び、人脈作りを行うのです。そのうえで、さらに選抜の後、各国にて実際に業務を担うため派遣されるという育成制度です。すでに60各国以上に4,000人が派遣され、一人の派遣には約800万円にも上るコストが費やされているといいます。 サムスンでは、それだけの育成に時間とコストを費やした上で、各国法人のトップに本社国籍の人材を据えて、中央集権型のグローバル人事を進めています。
また、ある日本のメーカーでは、日本では定着しているものの、海外にはほとんど存在していないデリバリーサービスのビジネスモデルを展開しています。よって、どうしても日本人が海外に散って、現地市場にその商習慣を根付かせる必要があるため、自社のビジネスを深く理解し、ノウハウを持つ日本人社員が海外に駐在し、海外ビジネスの拡大を進めています。そのため、この企業では、派遣対象の日本人社員に対して、言語だけでなく、派遣先の国の文化や商習慣を学ぶ教育にも力をいれています。

 多くの日本企業も、かつてはこの中央集権型でした。しかし、サムスンと異なるのは、日本企業を飲み込んだグローバル市場競争のスピードが、日本人の育成のスピードを大きく上回ったという点にあります。 サムスンの地域専門家制度は、すでに20年の歴史があります。つまりこの手法によって昨今の経営に求められるスピードとボリュームに対応するには、大変な時間とお金が必要になるのと、国内での圧倒的なブランド力が必要です。よって、多くの日本企業がこの手法に行き詰まりつつあります。
では、国内、海外ともに厳しい競争環境にある、欧米企業は、人材のグローバル化をどう進めたのでしょうか。欧米企業は、ビジネスの展開をスピーディーにかつ効率的に進めるため、多くの企業で「現地化」、さらには「グローバル化」という手法が実行されています。
例えば、海外IT企業の日本市場進出を例に挙げてみましょう。皆さんもよくご存じのマイクロソフトや、IBMといった海外企業の日本法人トップのほとんどは、日本で採用された日本人です。そして日本独特の「新卒」という手法で多くの日本人が採用されています。彼らは、アメリカから日本に進出をする際、それまで日本企業が独占していたパソコンや、サーバー機器の市場で急速に拡大するため、欧米とは異なる日本の文化や、日本において非常に重要な「日本語」に堪能な人材を活用し、経営を任せました。結果、Windowsや、Excelといった、海外の製品が瞬く間に日本市場を席巻し、すでになくてはならないほど日本人の日常に密着し、浸透しています。
一方、日本企業においても、コマツなどすでにグローバル経営に長い歴史を持つ企業は、現地化がかなり進んでおり、各国での採用、育成、登用といったプロセスが実行されています。先般、人事担当常務の方と講演でご一緒した際にも、「現地化」、そして「海外法人のトップは内部から育てる」というしっかりとした方針の元で、現地人材の育成を行っているとお話されていました。

 現在多くの日本企業が取り組んでいるのもこの現地化だと思います。海外事業の拡大のスピードは今後もますます早まります。このスピードとボリュームに対応するために、「中央集権」から「現地化」へのシフトをどれだけ早く行えるかが、最初の大きなポイントになっているのではないでしょうか。
次回は、現地化の次に目指す姿、本当のゴールとなる「人材のグローバライズ」について事例をご紹介しながらお話を進めます。どうぞお楽しみに。

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********* 【筆者プロフィール】 ****************************************

南 和気

SAPジャパン株式会社 HCMソリューション部 部長
大阪大学法学部卒業後、他社を経て2004年よりSAPジャパンに入社。
人事・人材戦略のコンサルティングおよびIT活用の提言に従事。
国内外含め多くの顧客企業とのディスカッションを通じ
日本型タレントマネージメントを研究、提唱。
講演多数。

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